第三者評価結果

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全国社会福祉協議会による第三者評価結果を、以下に掲載致します。

(参考リンク) 全国社会福祉協議会 第三者評価事業 結果はこちら 詳細結果はこちら

1】第三者評価機関名 (社福)大阪府社会福祉協議会
評価調査者研修修了番号 SK15113
SK15180
【2】種別 児童養護施設 定員 30名
施設長氏名 太田 浩之 所在地 兵庫県
URL http://nantanai.hyogo.jp/100/
開設年月日 2013年04月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 南但愛育会
職員数 常勤職員 18名 非常勤職員 6名
専門職員 社会福祉士 1名 保育士 4名
社会福祉主事 10名 栄養士 2名
調理師 2名 中学校教諭教員免許 6名
施設設備の概要 (ア)居室数 23室 (イ)設備等 幼児ユニット・学童女子ユニット・小学生男子ユニット・中高生男子ユニット
(ウ) プレイルーム・多目的室・相談室・心理室など (エ)
【3】理念・基本方針 【理念】
1.利用者の意向を尊重し、利用者が尊厳を保ちつつ健やかに育成されるよう支援する。
2.良質、適切、総合的な福祉サービスを提供する。
3.地域住民及び福祉関係者と協力し、地域福祉を推進する。
4.サービスの質と経営の透明性を高めると共に、経営基盤の強化を図る。【子育ての理念・子育て支援規準】
1.私たちは、こどもの権利を保障します。
2.私たちは、こどもの成長・発達を支援します。
3.私たちは、こどもの自立を支援します。
4.私たちは、地域の子育てを支援します。
【4】施設の特徴的な取組 ◇地域・学校・行政との連携
開設当初から地域住民の理解も厚く、要保護児童対策地域協議会ほか会議への参画等を通じて、地域や学校、行政との関係性を着実に育くんでいます。◇自然環境に恵まれた立地
都会の喧騒を離れた静かな環境の中で、子どもたちはたくさんの自然や生き物に触れながら、のびのびと心豊かな体験を積むことができます。また、なかなか電車やバスを利用できない地理的環境において、登下校の時間などは子どもたちの体力づくりにもつながっています。◇30人の少人数・ユニット化
学童以上の子どもたちには個室が用意されており、ユニット単位を中心とした生活により、子どもたちは職員のきめ細かなケアのもと、より落ち着いた環境で安心して生活することができます。
【5】第三者評価の受審状況 2015年10月19日(契約日)~ 2016年03月08日(評価結果確定日)
受審回数 前回の受審時期
【6】総評  児童養護施設「睦の家」(以下「当施設」という。)は、法人2箇所目の児童養護施設で、平成25年4月に開所した児童定員30名の小規模児童養護施設です。道路を挟んで子どもたちが通う小学校があり、施設の周りは自然環境に恵まれたのどかな田園地帯です。そんな中で子どもたちの生活空間は、1階に幼児、学童女児、2階に小学生男児、中高生男児の4つのユニット空間に分かれ、それぞれ6~8名の子どもたちが生活しています。幼児ユニットを除いて学童以上は全て個室が用意され、子どもたちはプライバシーが守られた快適な空間で生活を送っています。現在30名の子どもたちが入所していますが、それらの子どもへの対応や支援に向けて職員が一丸となって取り組んでいます。事業を開始してまだ3年、運営に関する規程類や養育支援に関する各種マニュアル類等には未整備な物もありますが、施設の基盤づくりの確立を目指して着々と進められています。

◆特に評価の高い点
◇家庭的養護を目指した取り組み
前述のとおり、当施設は、家庭的養護を目指して施設を小規模化し、子どもの生活空間もすべて6~8名の小規模グループケアが営まれる体制となっています。幼児ユニットを除いて学童以上のユニットには全て個室が用意され、それぞれの階のユニットの4名の職員と、アットホームな環境のもと子どもと和やかで密度の濃い関わりを展開しています。こうした生活スタイルにより子どもたちはストレスが少なく、落ち着いた生活を送れ、また、安定感のある場所で、大切にされる体験を得て自己肯定感を高めています。まだまだ取り組むべき課題は存在しますが、施設における家庭的養護のあり方を模索しながら実現可能な部分から漸次取り組んでいこうとする施設の姿勢は大いに評価できます。

◇地域・学校との連携
当施設の敷地はこれまで学校や保育所が建設されていた場所で、地元の住民も公共性の高い児童養護施設の建設や運営に大変協力的で、そういった土壌のもとで施設と地域の交流や連携は積極的に展開されています。地元の自治振興連絡会を始め市の子ども子育て会議に加入し、講演等で地域に貢献しているほか、市の社会福祉法人連絡協議会の立ち上げに関しそのメンバーの一員として児童問題だけでなく、福祉全般の相談に応じる取り組みに参画しています。また、一方で地元民生委員や更生保護女性会等の人がボランティアとして施設に携わってもらっており、施設と地域の関係は相互交流という形で進められています。また、学校との関係は非常に良好で、施設の子どもの養育・支援に関して大変協力的です。

◇子どもの権利擁護と子どもへの権利の説明
年1回権利ノート「あなたの未来をひらくノート」を職員と子どもが読み合わせを行うほか、入所時にはリーフレットでプライバシー保護を説明する等、自己と他者の権利について理解を深める説明が丁寧に行われています。管理規程には“子どもの権利”について具体的な記載があり、職員は毎日のミーティングで「すべてのこどもに安心安全な生活を」を用いて養育の振り返りを行っています。また、全国児童養護施設協議会の「人権チェックリスト」を取り入れている等、ケアの基本として子どもの権利擁護を重視している取り組みは高く評価できます。

◇幅広い経験のある職員とのチームワーク
新設施設で職員の経験は全体に浅いので、施設の基盤作りに長年の教育現場で経験のある職員が3名非常勤職員として役割を果たしています。小学校の校長経験のある職員は教育機関や地域社会との連携や職員への支援の役割を、学校心理士経験がある職員は若い心理職員のスーパーバイザー的な役割を、特別支援教育の経験がある職員は特別指導(スポーツ・創作活動・芸術活動等)の役割を担い、すべての職員から厚い信頼を獲得しています。その結果、福祉的視点と教育的視点の両方から子どもを理解していく体制ができており、施設のチームワーク作りに大きな役割を果たしています。

◇配慮のこもった食事
食事は彩りよい変化に富んだ献立で、夕食はユニットごとで炊飯し出来立てのごはんを提供しています。また週3回の職員手作りのおやつ、子ども一人一人の好みに合わせた手作りの誕生日のデコレーションケーキ等、手間暇をかけ心のこもった献立内容を提供しています。子どもの嗜好調査結果を献立に十分に反映しており、子どもの満足度も非常に高く、食事の取り組みは高く評価できます。

◆改善が求められる点
◇各種マニュアル類の整備と実践の文章化
施設開設以来入所児童の養育・支援について職員間のチームワークのもと熱心に取り組んでいますが、その取り組みの根拠ともなる「業務標準マニュアル」を始め施設運営における必要な規程やマニュアル類に未整備な部分が見られます。マニュアル作成の意義や目的について職員全員が再確認するとともに、現在実施していることの文章化から始め、組織的に規程やマニュアル類を作成し、それに基づいた取り組みが求められます。

◇事業計画の入所児童等への周知
毎年度、事業計画は策定していますが、子ども等に周知すべき事柄が周知されていません。事業計画書にある「事業計画に基づく取り組み」は、施設での生活に関するその年度の重点目標と具体的な取り組みを明文化しているので、子どもの年齢や発達等に応じ、ユニット毎で説明するとともに掲示するなりして、子どもや保護者に対して周知に向けた取り組みが求められます。

◇スーパービジョンの体制
スーパーバイザーについては実態として施設長、施設長補佐、フロアリーダーがその役割を担い、心理士には学校心理士経験のある職員が役割を担って、職員からの相談への対応や助言を行っていますが、施設としてのスーパービジョン体制は確立されていません。基幹的職員は配置されていますがスーパーバイザーとしての役割は不明確ですので、施設全体としてスーパーバイズ体制を確立し、組織力をさらに向上させることが望まれます。

◇施設生活のルールの作成
入所の際に保護者と子どもに配布される「お知らせ」に施設生活のルールについて5項目の記載があり、説明が行われていますが、「お知らせ」は保護者向けの文書で漢字や抽象的な表現が多く子どもにはわかりにくい内容です。生活のルールや約束事等について子どもとの話合いを踏まえて確認し、わかりやすい具体的な内容を掲示することや、子ども用の「生活のしおり」等の作成、配布が望まれます。

【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  今回の評価結果については、事前説明・受審準備・訪問調査・評価結果の報告まで、綿密な計画の基に進めていただきました。そのため、こちらが準備すべきこともよく理解でき、評価に必要な職員の共通理解もしっかりと図ることができました。
評価を受けた内容についても、職員でよく検討を行い、伸長すべき項目については工夫・改善を重ねながら継続することを確認できました。また、本施設で課題となる項目については、早急に準備すべきマニュアル作成や組織体制確立に向けた取り組みを開始しております。
そして、平成28年度の事業計画等に盛り込み、評価を生かせる取り組みを開始することで、本施設の理念である「子どもの権利の保障・子どもの健全な成長と発達の支援・子どもの自立に向けた支援・地域の子育ての支援」を実現すべく、全職員で継続的なサービス向上に取り組んでいきたいと考えています。

 

第三者評価結果詳細
共通評価基準(45項目)Ⅰ 養育・支援の基本方針と組織
1 理念・基本方針
(1)理念、基本方針が確立・周知されている。 第三者評価結果
1 理念、基本方針が明文化され周知が図られている。 b
【コメント】
法人理念に基づいて施設の理念及び基本方針が明文化されています。理念は「子育て支援規準」の4つの柱、子どもの権利擁護、子どもの発達保障、子どもの自立支援、家庭・地域支援を掲げ、基本方針は、それらの実現に向けた具体的な取り組み内容となっています。職員へは毎年度当初それらを読み合わせ、意識を高めています。子どもや保護者に対しては入所の折に「お知らせ(入所のしおり)」やパンフレットとともに「子育て支援規準」を手渡していますが、周知に向けて十分な取り組みが望まれます。
2 経営状況の把握
(1) 経営環境の変化等に適切に対応している。 第三者評価結果
2 施設経営をとりまく環境と経営状況が的確に把握・分析されている。 a
【コメント】
全国の社会福祉事業全体の現況や動向は、県の児童養護連絡協議会(以下、県養協)や経営者協議会などの会合や国のホームページ等で情報を得ています。地域の動向等については、丹波市の子ども子育て会議や丹波市社会福祉法人連絡協議会から情報を把握しています。また、毎月の入所児童数の推移をあらわし養育・支援のコスト分析や利用率の分析を行っています。
3 経営課題を明確にし、具体的な取組を進めている。 a
【コメント】
施設の現状における経営課題は、安定的な入所児童の確保ということですが、そのための当施設の取り組みとして、子どもに対する養育支援を大切にした生活集団の小規模化や支援内容の専門化をより強化する方針を打ち出しています。
3 事業計画の策定
(1) 中・長期的なビジョンと計画が明確にされている。 第三者評価結果
4 中・長期的なビジョンを明確にした計画が策定されている。 b
【コメント】
法人の中・長期計画は策定され、施設整備計画として乳児院創設計画等が盛り込まれています。当施設に関しては、ファミリーホーム開設計画が明文化されていますが、それだけに留まっており、3年後、5年後、10年後の青写真がありません。施設設立3年目の現時点において施設の基盤を作り上げるためにルール作りや規則・マニュアルの整備等の施設として未着手の課題等に計画的に取り組むことが望まれます。
5 中・長期計画を踏まえた単年度の計画が策定されている。 b
【コメント】
事業計画書は単年度に実施すべき取り組みを生活支援や健康管理、安全管理等各領域毎に目標を定め、具体的な計画が策定されています。特に「事業計画に基づく取り組み」として「生活支援」「学習支援」「自立支援」「健康管理と保健指導」といった直接子どもへの養育支援に関する部分については詳細に具体的な取り組み計画が策定されており、評価されます。
(2) 事業計画が適切に策定されている。
6 事業計画の策定と実施状況の把握や評価・見直しが組織的に行われ、職員が理解している。 b
【コメント】
事業計画は施設長が策定していますが、年間のすべての事業についての計画を作成するためには各担当の職員の参画や意見等を反映させることなどが求められます。また、事業計画に基づいた事業展開の確認や見直し、評価に関しての仕組みを確立させることが求められます。
7 事業計画は、子どもや保護者等に周知され、理解を促している。 c
【コメント】
子どもや保護者に伝えるべき事業計画の内容(例えば「生活支援」や「学習支援」等に掲げられた目標や具体的な取り組みなど)については、施設内で掲示したり説明会を実施するなど工夫して、周知に向けて取り組むことが求められます。
4 養育・支援の質の向上への組織的・計画的な取組
(1) 質の向上に向けた取組が組織的・計画的に行われている。 第三者評価結果
8 養育・支援の質の向上に向けた取組が組織的に行われ、機能している。 a
【コメント】
養育・支援の質の向上に向けて、年4回の処遇検討会ですべての子どもの状況を報告し、養育・支援のあり方について職員間で確認しています。第三者評価は今回が初めての受審ですが、毎年、定められた様式で自己評価を実施し、その結果を分析するとともに課題については計画的に取り組んでいます。
9 評価結果にもとづき施設として取り組むべき課題を明確にし、計画的な改善策を実施している。 a
【コメント】
自己評価の結果を文章化し、分析の結果、改善すべき課題を明確にしています。そして、取り組むべき課題については優先順位を考慮して、計画的に取り組んでいます。取り組みにあたっては、例えば、研修の担当職員が参画して研修計画を策定しています。
Ⅱ 施設の運営管理
1 施設長の責任とリーダーシップ
(1) 施設長の責任が明確にされている。 第三者評価結果
10 施設長は、自らの役割と責任を職員に対して表明し理解を図っている。 b
【コメント】
施設長の役割と責任は、「管理規程」に明文化されています。また、「職員組織編成及び業務分担表」にも明示され、職員に周知しています。災害時などにおける施設長の役割や責任も定められています。広報誌やホームページに施設の経営・管理をリードする立場としての施設長の役割・責任を明らかにすることが望まれます。
11 遵守すべき法令等を正しく理解するための取組を行っている。 a
【コメント】
施設長は、県の施設長会議を始め経営者部会等の研修会に積極的に参加し、法令遵守に関する研修を受講しています。また、それらの内容を職員に提供、周知に努め、法令遵守に関しての職員の自覚や意識の向上に努めています。
(2) 施設長のリーダーシップが発揮されている。
12 養育・支援の質の向上に意欲をもちその取組に指導力を発揮している。 b
【コメント】
養育・支援の質の向上について、自己評価の分析検討から施設内の研修体制や研修テーマを定めるなど、職員研修に積極的に取り組んでいます。今後はさらに養育支援向上委員会等の組織を立ち上げ、常にその向上に向けた取り組みを組織的に行うことが望まれます。
13 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している。 b
【コメント】
施設長は、業務の実効性等の向上に向けて人事や労務を踏まえ分析を行い、職員が働きやすい環境に向けて積極的に取り組んでいます。法人内に同規模の児童養護施設が他にもあり、今後ますますの連携や交流、情報を交換し合って経営面・養育支援面での向上に向けて取り組むことが望まれます。
2 福祉人材の確保・育成
(1) 福祉人材の確保・育成計画、人事管理の体制が整備されている。 第三者評価結果
14 必要な福祉人材の確保・定着等に関する具体的な計画が確立し、取組が実施されている。 b
【コメント】
管理規程には職員に関する基本的な考え方や直接処遇職員としての必要な専門性等を明文化しています。福祉人材の確保に向けた法人・施設の方針や方法等を確立しておくことが望まれます。
15 総合的な人事管理が行われている。 b
【コメント】
福祉職員としての一般的な「職員像」は管理規程や「子育て支援規準」に文章化されています。人事基準は就業規則、管理規程に定められ、職員に周知しています。人事考課は法人として導入を考えていますが、取り組みが現時点では不十分な状況です。職員への定期的な施設長面談の実施に向けて取り組むことが望まれます。
(2) 職員の就業状況に配慮がなされている。
16 職員の就業状況や意向を把握し、働きやすい職場づくりに取り組んでいる。 b
【コメント】
職員の働きやすい環境づくりとして有給休暇の消化率を高める努力や育児休業を取得しやすい職場づくりに努力しています。職員との定期的な施設長面談や職員の悩み相談の体制が確立していないので、工夫しながら取り組むことが望まれます。
(3) 職員の質の向上に向けた体制が確立されている。
17 職員一人ひとりの育成に向けた取組を行っている。 c
【コメント】
施設長の職員面談がまだ実施されていないので、まず、定例的に職員との面談を実施し、その上で職員個人の目標を明確にする取り組みが求められます。
18 職員の教育・研修に関する基本方針や計画が策定され、教育・研修が実施されている。 a
【コメント】
職員研修の目的として、①子どもの心身の健やかな成長と自立支援の充実のため、②職員個々のキャリアアップを図るため、③施設の養育支援の課題解消を図るためと定め、基本的には職員が抱えている問題対応のための研修を柱に計画がなされています。研修担当者として7名の職員が担当し、テーマや研修形態等を検討し、研修評価についても話し合い、次の研修に反映しています。
19 職員一人ひとりの教育・研修の機会が確保されている。 b
【コメント】
日常的なOJTはユニット責任者が当たり、また、職責として施設長補佐および心理職スーパーバイザーが職員支援の役割を担当しています。研修は内部研修、外部研修、初任者研修、ケース会議等に整理され取り組まれていますが、階層別研修、職種別研修等も含めて施設として体系立った研修体制を構築することが望まれます。
(4) 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成が適切に行われている。
20 実習生等の養育・支援に関わる専門職の教育・育成について体制を整備し、積極的な取組をしている。 a
【コメント】
学生による施設実習を福祉人材の養成と位置づけ、積極的に取り組んでいます。実習の受け入れは現在保育実習のみで、マニュアルに沿ってユニット職員、栄養士、調理員、事務職員等が担当しています。実習指導者に対する研修は県養協が実施している研修会に参加しています。
3 運営の透明性の確保
(1) 運営の透明性を確保するための取組が行われている。 第三者評価結果
21 運営の透明性を確保するための情報公開が行われている。 b
【コメント】
ホームページには、養育支援の内容や事業計画及びその報告、予算・決算や苦情内容等が公表されています。さらに施設の理念や基本方針についても公開することが望まれます。
22 公正かつ透明性の高い適正な経営・運営のための取組が行われている。 b
【コメント】
施設における事務、経理、取引等に関する職務分掌や権限等については経理規程等に定められ、それに基づいた取り組みがなされています。また、公認会計士による経理指導を設けています。
4 地域との交流、地域貢献
(1) 地域との関係が適切に確保されている。 第三者評価結果
23 子どもと地域との交流を広げるための取組を行っている。 a
【コメント】
法人の中・長期計画や子育て支援規準に地域との関わりについての基本的な考えを明記し、積極的な交流を展開しています。地元の民生委員や愛育班、更生保護女性会の人たちをボランティアとしてお願いしたり、地元の商店や医療機関といった社会資源を積極的に利用しています。
24 ボランティア等の受入れに対する基本姿勢を明確にし体制を確立している。 b
【コメント】
地域の人々や学校等のボランティアは、地域社会と施設を繋ぐ柱の一つとして積極的に受け入れるようにしています。地元民生委員の花植えや更生保護女性会の紙芝居など定期的に受け入れています。ただ、ボランティア受け入れに関するマニュアルが未整備なので、作成することが望まれます。
(2) 関係機関との連携が確保されている。
25 施設として必要な社会資源を明確にし、関係機関等との連携が適切に行われている。 a
【コメント】
地域の社会資源については、丹波市要保護児童対策地域協議会作成の冊子に記載されている関係機関一覧表を使用し、1階、2階のユニットそれぞれに備え付けています。関係機関・団体との定期的な連絡会には積極的に参加するとともに法人内の児童家庭支援センターの出張相談事業として受け入れを実施しています。
(3) 地域の福祉向上のための取組を行っている。
26 施設が有する機能を地域に還元している。 b
【コメント】
法人の運営する児童家庭支援センターと連携して地域住民の相談事業等を実施しています。また、施設長は丹波市の子ども子育て会議等で講演を実施し、地域に向けては積極的な取り組みが展開されています。
27 地域の福祉ニーズにもとづく公益的な事業・活動が行われている。 b
【コメント】
各地区の民生委員との交流が活発で、身近な福祉ニーズの把握に努めています。また、各市との連絡を積極的に行い、現在、丹波市を中心に合計近隣7箇所の市町村とショートステイ契約を締結しています。市の社会福祉法人連絡協議会への参加を通じて、他施設他機関から子育て関連ニーズの把握に努めています。
Ⅲ 適切な養育・支援の実施
1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもを尊重する姿勢が明示されている。 第三者評価結果
28 子どもを尊重した養育・支援の実施について共通の理解をもつための取組を行っている。 b
【コメント】
「子育て支援規準」をもとに子どもを尊重した養育・支援が展開されています。施設の「管理規程」に子どもへの支援に関する基本方針や原則が子どもの権利擁護の視点で明文化されており、同時に全国児童養護施設協議会が発行している「倫理綱領」や「人権チェックリスト」を取り入れ、子どもの基本的な人権に向けての取り組みがなされています。
29 子どものプライバシー保護等の権利擁護に配慮した養育・支援の実施が行われている。 b
【コメント】
基本方針としている「子育て支援規準」には、「体罰やプライバシーの侵害、その他の人権侵害にあたる行為を禁止する。」と謳われており、子どものニーズや特性に応じて、養育・支援を展開していますが、生活場面等におけるプライバシー保護に関した具体的な取り組みを定めた規程やマニュアルが未整備です。
(2) 養育・支援の実施に関する説明と同意(自己決定)が適切に行われている。
30 子どもや保護者等に対して養育・支援の利用に必要な情報を積極的に提供している。 a
【コメント】
子どもや保護者に対して施設の必要な情報を積極的に提供しています。具体的にはカラフルなパンフレットをはじめ「入所のしおり」や「子育て支援規準」、あるいはホームパージに写真を多用した施設行事など施設の情報を丁寧に伝える取り組みを行っています。
31 養育・支援の開始・過程において子どもや保護者等にわかりやすく説明している。 b
【コメント】
入所時には子どもや保護者の思いや気持に添って丁寧に対応しています。入所時には施設パンフレットの他、「子育て支援規準」および「お知らせ(入所のしおり)」を手渡して説明していますが、漢字や抽象的な表現が多く子どもにはわかりにくい内容です。わかりやすい具体的な内容を掲示することが望まれます。
32 措置変更や地域・家庭への移行等にあたり養育・支援の継続性に配慮した対応を行っている。 b
【コメント】
措置変更は1件あり、その折は簡単な引継書を作成していますが、所定の引継書の作成には至っていません。アフターケアは体系化できていませんが、相談があれば元担当者や家庭支援専門相談員等が対応しています。
(3) 子どもの満足の向上に努めている。 第三者評価結果
33 子どもの満足の向上を目的とする仕組みを整備し、取組を行っている。 b
【コメント】
子どもの生活に関する満足度調査は、食事の嗜好調査や日常の職員との個別の話し合いなどから把握しています。子どもの年齢や発達等に応じ、施設のソフト面、ハード面すべてについてのアンケートを取るなどの工夫が望まれます。そしてその結果をみて子どもの満足をさらに向上させる取り組みが望まれます。
(4) 子どもが意見等を述べやすい体制が確保されている。
34 苦情解決の仕組みが確立しており、周知・機能している。 b
【コメント】
県の子育て支援規準推進委員会が実施している苦情解決の仕組みが確立しています。入所時に手渡す「お知らせ(入所のしおり)」に明示されており、それに沿った取り組みがなされています。意見箱設置の上に苦情解決の仕組みに関する掲示物が掲示されていますが、子どもにも分かるよう内容やレイアウトに工夫を加えることが望まれます。
35 子どもが相談や意見を述べやすい環境を整備し、子ども等に周知している。 b
【コメント】
子どもが相談したい時や意見を述べたい時に方法や相手を選択できる環境を整備し、そのことを子どもや保護者に分かりやすく伝えることが望まれます。「入所のしおり」などにそのことを具体的に文書化し、説明するなどの取り組みが望まれます。
36 子どもからの相談や意見に対して、組織的かつ迅速に対応している。 b
【コメント】
子どもからの相談や意見は、各ユニットで子どもとの話の中で聴取することが多いので、職員個々が意識を持って関わっています。ただ、施設として苦情体制のような組織的な体制が定まっておらず報告の手順や記録の方法、対応策の検討等を含めたマニュアル等の整備が望まれます。
(5) 安心・安全な養育・支援の実施のための組織的な取組が行われている。 第三者評価結果
37 安心・安全な養育・支援の実施を目的とするリスクマネジメント体制が構築されている。 c
【コメント】
設備点検については、施設の隅々に至るまで詳細な点検が行われています。事故防止に向けてのインシデントレポートについては現在、様式や手順等の準備を進めています。中学生は自転車通学をしており、事故防止に向けて注意喚起を行っています。子どもの安全管理に関して施設長を中心にトータルで体系的な取り組みが求められます。
38 感染症の予防や発生時における子どもの安全確保のための体制を整備し、取組を行っている。 b
【コメント】
感染症のマニュアルは現在他機関で作成されたものを利用していますが、施設の居室の構造や設備によって取り組み方も違ってくるので、当施設に応じたマニュアルを作成し、それに応じた取り組みが望まれます。
39 災害時における子どもの安全確保のための取組を組織的に行っている。 b
【コメント】
消防計画や職員の緊急連絡網は整備されています。火災の防火訓練は夜間を想定し他訓練も実施していますが、震災等を想定した対策、体制が確立されていません。様々な状況を想定して子どもの安否確認の方法、連絡体制などを確立しておくことが望まれます。
2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の標準的な実施方法が確立している。 第三者評価結果
40 養育・支援について標準的な実施方法が文書化され養育・支援が実施されている。 c
【コメント】
標準的な実施方法等が文書化された「業務標準マニュアル」は整備されていません。現在、それぞれのユニットで取り組んでいることを文書化し、マニュアル化して整備・活用することが求められます。
41 標準的な実施方法について見直しをする仕組みが確立している。 c
【コメント】
「業務標準マニュアル」は、その時々の子どもの状況や施設の状態等によって取り組みに違いが出てくるので、検証・見直しが必要になってきます。定期的に検証・見直しを取り組むことが求められます。
(2) 適切なアセスメントにより自立支援計画が策定されている。
42 アセスメントにもとづく個別的な自立支援計画を適切に策定している。 b
【コメント】
自立支援計画策定のためのアセスメント様式や自立支援計画の様式について、目下改定に向けて児童相談所と検討中です。自立支援計画の策定は、基本的に担当者が中心となって作成していますが、職員の経験値によって力量に差があるため、ユニットの職員全体で検討を重ね管理職の最終チェックを行っています。
43 定期的に自立支援計画の評価・見直しを行っている。 b
【コメント】
自立支援計画策定については県養協が作成した「自立支援計画作成のつぼ」に基づいて行われています。見直しについては年4回実施される処遇検討会議で行われ、職員全員がその内容を共有しています。保護者の状況が急変したとか子どもが突然行動化したといった自立支援計画を緊急に見直す必要が生じた時の手順等について定めておくことが望まれます。
(3) 養育・支援の実施の記録が適切に行われている。
44 子どもに関する養育・支援の実施状況の記録が適切に行われ、職員間で共有化さている。 b
【コメント】
子どものケース記録はパソコンのソフトを使用して実施しています。このソフトは補助金を活用して県内施設が共通のシステムとして使用しており、医療・アフターケアなどさまざまな記録が一元化されています。記録要領等の作成はできていませんが、上席者がチェックし、指導しています。情報の伝達は引き継ぎ簿やケース記録の確認によって行われていますが、情報漏れがないようにさらに仕組みを整備することが望まれます。
45 子どもに関する記録の管理体制が確立している。 b
【コメント】
記録の管理(保存期間や廃棄に関することなど)に関しては、管理規程に定められています。個人情報保護規程は策定されていますが、情報開示の部分も踏まえてこれに関する研修を充実させるとともに具体的な取り組みについて取り決めることが望まれます。
内容評価基準(41項目)A-1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもの尊重と最善の利益の考慮 第三者評価結果
A1 社会的養護が子どもの最善の利益を目指して行われることを職員が共通して理解し、日々の養育・支援において実践している。 a
【コメント】
子どもの最善の利益を“主体性の育成、自立支援の重視”と位置付けて、小規模グループケアにおいてきめ細かい支援が行われています。また、最善の利益を目指して、毎日のミーティングで「すべてのこどもに安心安全な生活を」の文書を用いた養育の振り返りに着手しており、その取り組みは評価できます。
A2 子どもの発達段階に応じて、子ども自身の出生や生い立ち、家族の状況について、子どもに適切に知らせている。 b
【コメント】
入所期間の長い子どもに思春期の前に生い立ちや家族の状況を伝える方針で、現在準備検討が行われ、ライフストーリーワークの研修も検討中です。
開設3年目で告知をした事例が少ないため、今後児童相談所と連携し実践が望まれます。
(2) 権利についての説明
A3 子どもに対し、権利について正しく理解できるよう、わかりやすく説明している。 a
【コメント】
年1回「あなたの未来をひらくノート」を職員と子どもが読み合わせを行うほか、入所時には「性の健康教育に関するリーフレット」でプライバシー保護を説明する等、自己と他者の権利について理解を深める説明が丁寧に行われています。また、管理規定に記載された子どもの権利についての学習や、全国児童養護施設協議会の「人権チェックリスト」を取り入れている等、職員が子どもの権利について学習する機会も充実し、権利擁護の取り組みは充実しています。
(3) 他者の尊重
A4 様々な生活体験や多くの人たちとのふれあいを通して、他者への心づかいや他者の立場に配慮する心が育まれるよう支援している。 b
【コメント】
小集団グループケアを導入したことで子ども間の距離、子どもと職員間の距離が近づき、信頼感や助け合い、思いやりの気持ちが育まれています。「焼きいも大会」に地域の人々を招く等、地域住民との交流が図られています。子ども間トラブルの際の主体的な関係修復については取り組みの充実が望まれます。
(4) 被措置児童等虐待対応
A5 いかなる場合においても体罰や子どもの人格を辱めるような行為を行わないよう徹底している。 a
【コメント】
管理規程に虐待の禁止や虐待の定義、児童の権利内容等が詳細に明記されています。就業規則には懲戒規定の記載があります。
「被措置児童虐待対応マニュアル」には対応の流れや虐待が起こる背景、防止策等も記載され評価できます。
A6 子どもに対する不適切なかかわりの防止と早期発見に取り組んでいる。 b
【コメント】
被措置児童虐待対応マニュアルに不適切なかかわりについても具体的な記載があります。窓を広くして風通しの良い環境づくりや毎日のミーティングでの養育の振り返り等、不適切なかかわり防止への多様な取り組みが評価できます。
不適切なかかわりがあった場合の施設内の対応の流れや処分の仕組みが確認できませんので、マニュアル及び就業規則への記載が望まれます。
A7 被措置児童等虐待の届出・通告に対する対応を整備し、迅速かつ誠実に対応している。 b
【コメント】
「被措置児童虐待対応マニュアル」、「公益通報者保護規定」が整備され、職員への周知が行われています。
施設内の検証の流れや第三者の意見を聞く仕組みが未整備ですので、検討が望まれます。
子どもには権利ノート添付のハガキ(自ら相談や訴えができる)の説明がなされていますが、わかりやすい掲示物が望まれます。
(5) 思想や信教の自由の保障
A8 子どもや保護者等の思想や信教の自由を保障している。 a
【コメント】
施設に宗教的な背景はなく、子どもや保護者の思想や信教に最大限配慮が行われています。取り組みの継続を期待します。
(6) こどもの意向や主体性への配慮
A9 子どものそれまでの生活とのつながりを重視し、そこから分離されることに伴う不安を理解し受けとめ、不安の解消を図っている。 b
【コメント】
子どもの不安解消のため、入所前面談に努め、職員間で入所児の情報共有を行っています。
入所時は各ユニットで家庭的な雰囲気で暖かく迎えています。対応の手順や留意点について、文書化が望まれます。
A10 職員と子どもが共生の意識を持ち、子どもの意向を尊重しながら生活全般について共に考え、生活改善に向けて積極的に取り組んでいる。 a
【コメント】
各ユニットでの日常的な話し合いを行うほか、長期休みの前には子どもが司会をして日課や行事について話し合いがなされています。
子どもの意向を踏まえて、就寝時間、食事の時間、入浴順番などの改善が行われています。
(7) 主体性、自律性を尊重した日常生活
A11 日々の暮らしや、余暇の過ごし方など健全な生活のあり方について、子ども自身が主体的に考え生活できるよう支援している。 a
【コメント】
スポーツが楽しめる広いグランドやサンルーム、友人と遊べる部屋等、余暇を楽しめる環境整備が充実しています。ユニットにはパソコンが整備され幅広く活用されています。高校生は携帯電話の利用が可能です。
施設行事より部活動を選択することも認められており、主体的な生活を保障する取り組みは評価できます。
A12 子どもの発達段階に応じて、金銭の管理や使い方など経済観念が身につくよう支援している。 a
【コメント】
小遣いは幼児500円から高校3年生5,000円まできめ細かく額が設定されており、小遣い帳をつけて金銭の使い方を支援しています。高校生は費用の自己負担とルール厳守を前提に携帯電話の所持を認め、トラブルに留意しながら自己管理を支援しています。
経済的な自立支援プログラムの実践例はありますが、取り組みの充実を期待します。
(8) 継続性とアフターケア
A13 家庭復帰にあたって、子どもが家庭で安定した生活が送ることができるよう復帰後の支援を行っている。 b
【コメント】
虐待事例については児童相談所の「家庭復帰評価委員会」に参画し、市町村等と連携して計画的な家庭復帰支援を行っています。
復帰後の相談には対応していますが記録が未整備です。アフターケアの実践記録は重要ですので、効率的な記録方法を検討する等、記録の整備が望まれます。
A14 できる限り公平な社会へのスタートが切れるように、措置継続や措置延長を積極的に利用して継続して支援している。 a
【コメント】
児童相談所と連携して、専門学校生に措置延長による進学支援を実践しており、来年度は短大進学生も措置延長の予定です。子どものニーズに合わせた支援が行われており、評価できます。
A15 子どもが安定した社会生活を送ることができるようリービングケアと退所後の支援に積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
リービングケアとアフターケアの効果的実施は事業計画の重点目標に掲げられています。その一環として高校生の調理指導や専門学校生への生活全般の自立支援を行っていますが、今後は実践を踏まえたプログラムの構築が望まれます。
退所者が集まる機会は、入所児童のリービングケアにとっても重要であり、行事の案内をする等退所者との交流機会の充実が望まれます。
A-2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の基本 第三者評価結果
A16 子どもを理解し、子どもが表出する感情や言動をしっかり受け止めている。 b
【コメント】
年4回処遇会議で全ての子どもの養育支援のあり方について話し合いが行われています。管理規定にも被虐待児のケアや問題行動を起こした子どものケアの留意点が明記されています。
今後はアンケート調査等による、すべての子どもの幅広い意向や要望の把握とニーズへの対応が望まれます。
A17 基本的欲求の充足が、子どもと共に日常生活を構築することを通してなされるよう養育・支援している。 b
【コメント】
ユニット化により子どもと職員の距離が近くなり、個別の欲求が把握しやすくなっています。
誕生会の子どもとの1対1の外出や月1回のお茶会等で個別に触れ合う時間の確保に努めています。
ユニットケアでは職員の裁量権や柔軟な対応は不可欠ですが、職員間の差が生じないよう養育の標準化が望まれます。また夜勤はフロアに1名の体制で、スタッフルームから子どもの観察は出来ていますが、幼児ユニットでは職員が添い寝する等、子どもの安心感が増す体制の検討が望まれます。
A18 子どもの力を信じて見守るという姿勢を大切にし、子どもが自ら判断し行動することを保障している。 b
【コメント】
開設当初は必要以上の指示があったようですが、3年目を迎え子ども集団が安定し、子どもの主体的な解決を見守り支援する状況にあります。
朝の職員配置はフロアに1名の体制ですが、起床から登校(園)までの時間は個別の配慮が必要ですので、職員体制の検討が望まれます。
A19 発達段階に応じた学びや遊びの場を保障している。 b
【コメント】
恵まれた自然環境、広いグラウンドやサンルーム、図書、パソコン等ニーズに応じた遊びの環境が整備されています。
ボランティアは地域住民の協力で紙芝居、着付け教室、おやつ作り等幅広く活用されており、評価できます。未就園の幼児には日々内容を変えた保育を実施していますが、保育内容の記録やプログラム化が望まれます。
A20 秩序ある生活を通して、基本的生活習慣を確立するとともに、社会常識及び社会規範、様々な生活技術が習得できるよう養育・支援している。 b
【コメント】
家庭的な環境のもとで穏やかな暖かい雰囲気が感じられます。
施設のルールは入所の際に配布される「お知らせ」に記載があり保護者と子どもに配布されていますが、子どもには漢字が多く抽象的でわかりにくい内容です。生活のルールや約束事等について子どもとの話合いを踏まえて確認を行い、わかりやすい具体的なルールを掲示することや、子ども用の「生活のしおり」等の作成配布が望まれます。
(2) 食生活
A21 食事は、団らんの場でもあり、おいしく楽しみながら食事ができるよう工夫している。 b
【コメント】
朝食と休日の昼食は食堂で、夕食は各ユニットで温かな美味しい食事が提供されています。食事は楽しい雰囲気でコミュニケーションの重要な場になっています。
誕生日の外食や招待食事など多様な食事の機会があります。
夕食は子どもの意向も確認して5時30分に設定されていますが、家庭的ケアの視点からはもう少し遅い時間設定が望まれます。
A22 子どもの嗜好や健康状態に配慮した食事を提供している。 a
【コメント】
食事は彩りよく美味しく、お弁当も品数多く、週3回の手作りおやつや誕生日の子どもに合わせた手作りデコレーションケーキ等、配慮のこもった献立内容です。月2回の給食会議の議論や年1回の子どもの嗜好調査結果を献立に反映しており、子どもの満足度も非常に高く、その取り組みは評価できます。
A23 子どもの発達段階に応じて食習慣を身につけることができるよう食育を推進している。 b
【コメント】
特別指導の一環としてユニット単位で買い物から後片付けまでの調理実習が行われているほか、高校生対象の調理指導、野菜を育てる取り組み等が行われています。
献立表は食堂と各ユニットに掲示されていますが、月間献立表のため字が小さくわかりにくい状況です。字を大きくすることや、料理の写真やレシピ、栄養知識コメント等も記載する等、子どもが楽しめる食育の取り組みが望まれます。
(3) 衣生活
A24 衣類が十分に確保され、子どもが衣習慣を習得し、衣服を通じて適切に自己表現できるように支援している。 a
【コメント】
衣類は個人の好みを尊重して用意され、年2回職員と一緒に衣類を購入する機会が確保されています。高校生はネット購入も可能で柔軟な取り組みがなされています。
中高校生女子は自分で洗濯しますが、男子にも自立支援のため洗濯や補修の機会づくりが期待されます。
(4) 住生活
A25 居室等施設全体がきれいに整美されている。 a
【コメント】
開設して3年目であり施設全体が新しく明るく整美されています。子どもは個室にこもることなくリビングで自由にくつろいでおり、アットホームな雰囲気が感じられます。
個室を自分の空間と意識して片づける習慣ができつつあり、評価できます。
A26 子ども一人ひとりの居場所が確保され、安全、安心を感じる場所となるようにしている。 a
【コメント】
施設全体がユニット化され、幼児ユニット以外は個室が確保されています。当初は子どもから個室は寂しいとの声もありましたが、今では安心安全な自分の空間となっています。個室は逃げ場にもなっており、子ども間のトラブル予防にも有効な環境となっています。
(5) 健康と安全
A27 発達段階に応じ、身体の健康(清潔、病気、事故等)について自己管理ができるよう支援している。 a
【コメント】
年2回の健康診断やユニットでの観察により健康支援が行われています。寝具はベランダで日光消毒がなされ、夜尿のある子どもには治療を支援しながら適切な配慮が行われています。
施設の安全点検が定期的に行われ、自転車通学の中学生には交通ルールの指導が行われています。
A28 医療機関と連携して一人ひとりの子どもに対する心身の健康を管理するとともに、必要がある場合は適切に対応している。 b
【コメント】
治療が必要な子どもには専門の医療機関に通院が行われており、投薬管理は薬の種類によって保管場所を分ける等適切に行われています。
今後、感染症や疾患予防の知識を深めるため保健所職員や嘱託医等による健康学習の検討が望まれます。
(6) 性に関する教育
A29 子どもの年齢・発達段階に応じて、他者の性を尊重する心を育てるよう、性についての正しい知識を得る機会を設けている。 b
【コメント】
県の「性教育プロジェクトチーム」に職員が参画し、プロジェクトで作成された「性の健康教育に関するリーフレット」を入所時に子どもに配布し説明を行っています。
今後、入所児全体への説明や、年齢に応じたカリキュラムや学習会の検討など生命の教育である性教育のさらなる充実が望まれます。
(7) 自己領域の確保
A30 でき得る限り他児との共有の物をなくし、個人所有とするようにしている。 b
【コメント】
個人ロッカー、タンスが整備され、自分の持ち物の自己管理を支援しています。
所有物は子どもの好みが尊重され、幼児の持ち物は可愛いイラストで表示されています。食器は、箸とカップは個人所有ですが、茶碗は共有です。家庭的なケアを目指すためには、ユニットでの茶碗等の食器は子どもの好みに合わせた個人所有が望まれます。
A31 成長の記録(アルバム等)が整理され、成長の過程を振り返ることができるようにしている。 a
【コメント】
個人別に写真にコメントが添えられたアルバムが用意され貴重な記録になっています。膨大な写真を丁寧に整理し子どもとの振り返りも行っています。
ライフストーリーワークの研修も予定されており、取り組みの充実が期待されます。
(8) 行動上の問題及び問題状況への対応
A32 子どもの暴力・不適応行動などの行動上の問題に対して、適切に対応している。 a
【コメント】
各ユニットで子どもの理解やトラブルへの迅速な対応、予防の取り組みがあり、管理規定にも「問題行動児の処遇留意点」の記載があります。
タイムアウトができる環境も整備されています。
発達障害についての研修も行われていますが、ユニットケアでは1人体制の時間もあり、職員の援助対応力の向上が不可欠ですので、研修の充実が期待されます。
A33 施設内の子ども間の暴力、いじめ、差別などが生じないよう施設全体で取り組んでいる。 a
【コメント】
ユニットケア、個室化、職員の配置や子どものグループ分けの配慮により子ども間のトラブルが減少し、効果を上げています。職員全員が小集団ゆえの子ども間の距離の近さがトラブルの要因にもなることを認識し、毎日のミーティングでの細かな情報共有を行っており評価できます。
A34 虐待を受けた子ども等、保護者等からの強引な引取りの可能性がある場合、子どもの安全が確保されるよう努めている。 a
【コメント】
保護者の状況等の情報共有に努めています。警察とはホットラインがあり迅速な対応ができる体制にあります。
引き取りについて児童相談所と考えが異なる場合には、協議を重ね判断の統一を図っています。
(9) 心理的ケア
A35 心理的ケアが必要な子どもに対して心理的な支援を行っている。 b
【コメント】
入所児童の約半数に心理支援が実施されています。心理療法室は生活スペースとの分離に配慮されており、子どもにとっての癒しの空間となっています。
学校心理士経験の長い職員が丁寧なスーパービジョンを行っています。
心理士は3年目で職員との連携やセラピーが定着してきており、今後は心理士間の横のつながりの強化や保護者への助言等の充実が望まれます。
(10) 学習・進学支援、進路支援等
A36 学習環境の整備を行い、学力等に応じた学習支援を行っている。 b
【コメント】
学習スペースや個室の学習机等、学習環境は整備されています。全般的に学力の低い子どもが多いため、月2回の学習支援員の「学び直しタイム」や教員OBによる夏休みの学習ボランティアを活用して、進学支援や学力回復に取り組んでいます。
地理的に学習塾利用は困難な状況にありますので、学校と教師経験のある職員との連携で個別の学習支援の充実強化が望まれます。
A37 「最善の利益」にかなった進路の自己決定ができるよう支援している。 a
【コメント】
高校進学は公立、私立、通信制(アフタースクール)等子どもの自己決定を尊重して幅広い選択肢が用意されています。
大学等の進学についても、措置を延長して専門学校に通う子どもや短大進学予定の子どもがおり、児童相談所と連携して柔軟な進路支援が行われています。
A38 職場実習や職場体験、アルバイト等の機会を通して、社会経験の拡大に取り組んでいる。 c
【コメント】
高校生のアルバイト経験や資格取得(ワープロ検定、簿記等)は自立支援の一環として積極的に支援しています。
中高のトライアル学習の際に励ましや助言等のサポートを行っています。今後は子どものニーズに応じて、地域の企業や商店との連携による職場実習等の検討が望まれます。
(11) 施設と家族との信頼関係づくり
A39 施設は家族との信頼関係づくりに取り組み、家族からの相談に応じる体制を確立している。 a
【コメント】
家庭支援専門相談員は専任で配置され、管理規定に職務が明記されています。一時帰宅の際は「家庭支援記録簿」で子どもの感想をイラスト等でわかりやすく確認する等、取り組みの工夫が評価できます。保護者には連絡の際に、子どもが頑張っている様子を写真付きで知らせており、信頼関係構築のための丁寧な取り組みが行われています。
(12) 親子関係の再構築支援
A40 親子関係の再構築等のために家族への支援に積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
家族療法室は厨房や風呂の設備があり親子宿泊が可能です。今後の多様な活用が望まれます。再構築の方針は処遇会議や他機関との家庭復帰評価委員会で検討が行われています。今後はFSWと担当職員等の連携や役割分担について整理が行われ再構築への支援がより充実することが望まれます。
(13) スーパービジョン体制
A41 スーパービジョンの体制を確立し、職員の専門性や施設の組織力の向上に取り組んでいる。 b
【コメント】
スーパービジョンの実態としては、施設長、施設長補佐、フロアリーダーがスーパーバイザーの役割を、心理士には学校心理士の経験のある職員が役割を担い、職員への相談対応や指導を行っています。
基幹的職員は配置されていますが、役割が不明確ですので、施設全体としてスーパーバイズ体制を確立し組織力をさらに向上させることが望まれます。

 

(参考リンク) 全国社会福祉協議会 第三者評価事業 結果はこちら 詳細結果はこちら